#36 Caille fonoie au chou et aus truffes
平松宏之 / 株式会社ひらまつ総合研究所
2002年、日本人として初めてフランス版のミシュランで星を獲得し、日本人の料理技術の高さを世界に知らしめた、ひらまつの平松宏之シェフが今回の主人公。
京都東山。
風情がにじむ小道に入った奥に、平松シェフの新境地はある。
2017年にオープンした高台寺ひらまつ。
若き料理人たちが食い入るように見つめる先にいたのが今回の主人公。
ひらまつの創業者にして、日本におけるフランス料理の開拓者。
67歳の今なお、調理場に立つ。
この日は2ヶ月に1度のソース講習会。
ソースづくりを通じて、平松シェフには、若い料理人に伝えたいことがあった。
「現代のフランス料理って、あんまりソースを使わなくなったんだけど、使わなくてもいいの。ただ、作れないのと、使わないのは全然違うから」
そして王道のフレンチを八坂の棟を眺めながら頂く、この最高のロケーションには、平松シェフの大いなる挑戦が込められている。
「日本料理とフランス料理が、フランスの文化が融合して、化学反応して爆発したような料理をやりたい」
それを体現するかのごとく、レストランから続く石段の先には、平松シェフが手掛ける料亭、高台寺 十牛庵が。そこで味わうのは、伝統の中にもフランス料理のテイストが融合した日本料理。
「頭だけじゃなかなかそうはならないから、実際にそこに身を置いて。
これが日本料理、日本の文化そのもので、向こうのレストランがフランスの文化。それが一緒にあることによって何かが生まれる」
今なお挑戦を続ける平松シェフは未来へ何を遺すのか。
いよいよ作品作り。
なのだが、平松シェフは
「何を出していいのかわからなくて」と切り出した。
そしてこう続けた。
「結局、若い料理人たちに何を作って欲しいかって聞いたの。
そうしたらなるべくクラシックなものが見たいと」
今回、平松シェフは、今、自分自身がやりたい日本文化と融合した料理ではなく、彼に続く若き料理人たちのために、本物のフランス料理に初めて触れた時の感動を未来に遺すことを決めた。
そして完成させたのがこの一皿。
ちりめんキャベツの上に山盛りの黒トリュフ。
そこに旨味の凝縮したソースをたっぷりとかけて完成させた。
ベーコン、うずら、オマール、黒トリュフ、フォアグラをちりめんキャベツで包み、さらにそれをガーゼで包み、ソースに浸して焼く。そうすることでしっとりとした蒸し煮のような仕上がりに。
今回あえてガーゼを使ったクラシックな調理法を用いたのには、そこに込めた想いがある。
「今回、若い料理人たちに聞いたんです。そうしたら、なるべく自分たちの知らない料理を出してくださいと。僕がちょうど料理を始めた時か、それよりもっと前の料理をやってみようと。そうしたら、彼らにとっては実はこれは新しいんですね。こういうものが後世に伝わっていかないとフランス料理は滅びてしまう」
平松シェフが出した答えには、フランス料理の永遠があった。
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