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#34 十勝豊頃大津産 エゾ鹿ブーダン・ノワール

佐々木章太 / ELEZO

今回の料理人は、”命ある状態”から”皿の上”までを手掛ける、食肉料理人集団ELEZOの代表、佐々木章太さん。

東京渋谷にある完全会員制のレストラン、ELEZO HOUSEでふるまわれる料理は全て鹿を使った料理。近年、ジビエを出す店は珍しくないが、あらゆる部位を最適な仕立てで余すところなく、一頭を丸ごと頂けるコースはそうそうない。

料理人はもっと厨房から出て、原点の方に戻っていって、責任を持つべきだと思っている。魚料理や野菜料理をはさまず、全部位を食べて頂く、命の味を濁りなく召し上がって頂くのがこの店の役割。肉の各部位の点をしっかりと線でつなげる、肉の一片、血の一滴までいかに無駄にしないで皆さんに喜んで頂くかを信念にしている」

そんなELEZOのスタイルを佐々木さんはこう表する。

「命ある状態」から「皿の上」まで

北海道十勝開拓始まりの地、豊頃町大津。
そこに佐々木さんが率いるELEZOの本拠地がある。

「命」を「食材」に転換する、食肉料理人集団、それがELEZO。
2005年に発足し、独自の仕組みを一から作り上げた。

ELEZOは4つの部門から成り立っている。
1つ目が命を扱う、生産・狩猟部門、2つ目が生肉を扱う流通部門、3つ目がシャルキュトリと呼ばれる加工製品を扱う部門と、それら3つを全般的に見せるという役割のレストラン部門。

最高の一皿を完成させるには、起点となる食材がどうあるべきか

すべては逆算から始まり、食肉業界初、前代未聞の構想を築き上げた。

「料理は厨房だけで作られてしまいがちだが、厨房に入る前から食の連鎖、積み上げというのが始まっていて、根源中の根源からいかに細かい工程を100点で積み上げるかということを常に念頭において、そこにしっかりと向き合える環境を作りたかった

佐々木さんはなぜ、このような考えに至り、ELEZOを立ち上げたのか。

そのきっかけは、若き日の衝撃的な体験だった。

佐々木さんはフレンチの料理人を志し、西麻布のフレンチの名店で腕を磨いていたが、その後、家業のレストランを手伝うために故郷の北海道に戻っていた。

その時、驚くほどおいしい鹿と出会った。
それまで名店の食べ歩きでもおいしいと感じなかった鹿だが、常連客のハンターが持ってきた鹿の目が覚めるようなおいしさ、雑味のなさに感動し、厨房という狭い世界にとらわれていた自分に気が付いたという。

たった2人で始めたELEZOはその高き志が共感を呼び、今や精鋭15名のチームになった。そして昨年末、日本の食文化に貢献した料理人をたたえる料理マスターズを受賞、すでに狩猟でもその活動が認められていたELEZOは国からAとZ両方で表彰される快挙を成し遂げた。


そんな命の料理人、佐々木さんが完成させた、未来へ遺すべき作品。

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ブーダン・ノワール(エゾ鹿の血のテリーヌ)。
十勝の山から始まる100点の積み重ねで完成させた作品。
完璧な技術で仕留められた鹿から最初に取り出されるのが「血液」。その血液を攪拌しながらスパイスで味付けし、それを火にかけ、粘度を増していく。キャラメリゼした未熟なバナナを加え、型に入れてオーブンで焼き上げた。

なぜ、この一皿だったのか。

血液は命から最初に取り出される食材。ELEZOはここから向き合えるという恵まれた環境を自ら作っている。この一番最初の食材を無駄にしないことに執着して、積み上げていくことで、ここから食が始まっていることを伝えたかった」

食材はもとをたどれば「命」。その命を頂いていることへの感謝を忘れない、そしてこれから先の未来の食にもその感謝の気持ちを伝え続けていくという決意の一皿でした。

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