#42 Symboise / Maitake,Chataigne,Truff(共生/舞茸、栗、トリュフ)
リオネル・ベカ / ESqUISSE(エスキス)
今回の料理人は銀座、ESqUISSE(エスキス)のエグゼクティブシェフ、リオネル・ベカさん。
彼の手から生み出される料理は、もはやアート。
「エスキスは何かの代弁者になりたい」
と話すリオネルシェフは、エスキスならではのクリエーションを1冊の本にまとめた。
そこに綴られているのは、皿が誕生するまでの物語。
景色や風景を目の前にした時の感情や感覚をどうやって味に変換して、料理で表現するか。
例えば、雪景色の中で感じた心の静けさはパースニップやココナッツで表現、都会の幾何学的な美も料理へと落とし込む。
そうしてできたシンプルな一皿に、涙した客もいるという。
リオネルシェフは、心を震わせる全てを料理へと昇華させる。
彼はどんな未来へ遺すべき作品を作り上げるのか。
エスキスの仲間と共に向かったのは山梨県北杜市のブドウ畑。
化学肥料や除草剤、殺虫剤は使用せず、栽培、醸造、瓶詰までを手作業でまかなう自然派ワイナリーBEAU PAYSAGE。
エスキスのスタッフ全員がほれ込むBEAU PAYSAGEのワイン。
エレガントだけどユニークで、親しみやすさもあるし、パワーも感じる。
そしてなにより、テロワールを感じる。
テロワールとは、その土地だからこそ、このワインができるという環境のこと。ここのワインを飲んだ時に、ブルゴーニュなどフランスのワインにそっくりで、こんなワインが日本でできるんだと驚かされたと言う。
オファーを受けた時から、このワインを軸に料理を作ると決めていたリオネルシェフ。
BEAU PAYSAGEから届いた5種類のブドウは、りんごとはちみつを合わせてもみつぶし、そこに乳酸菌を加えて発酵させ、天然酵母を作り、パンを完成させた。
BEAU PAYSAGEの土にはブルーチーズ、醤油粕を混ぜ、もみ込み、さらに乾燥させたセップダケをスモーキーなウイスキーで戻した後、ミキサーにかけて作ったペーストを加え、さらしにのせた。
そこに登場したのが、黒トリュフ。
土の中で呼吸して成長するトリュフ、それをBEAU PAYSAGEの土で包み熟成させ、トリュフをBEAU PAYSAGEのワインに合うものへと変換した。
これにあわせるのがイノシシ。タイム、ジュニパーベリー、ローズマリー、砂糖、塩、黒こしょうをまぶし、ハムにした。
そうして、ワインを軸とした、人と自然とテロワールが共生した一皿が完成した。
なぜこの一皿を未来に遺したいと思ったのか。
「トリュフが樫の木を養い、樫の木がトリュフを育てる。イノシシがトリュフを掘ると土が耕され、トリュフを養う樫の木にとって良い土壌となる」
「共生というシステムがしっかりと強ければ強いほど、それぞれの生き物がみんな強くなれる。人も自然と共生していけば、人も自然ももっと強くなれる」
テロワールから広がり、ハーモニーを奏でた料理のように、これからも、人と自然、生き物たちが同じ大地で生きていく。
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