#18 アマゾンカカオ
太田哲雄 / LA CASA DI Tetsuo Ota
ここ数年、料理界を席巻している食材、アマゾンカカオ。
実は、ある料理人がジャングルに分け入り直接買い付けしている。
太田哲雄シェフ、人呼んで、アマゾンの料理人。
イタリアで富豪のマダムお抱えの料理人をつとめたのち、スペインへと渡り、世界一予約が取れないと言われたエル・ブジの厨房へ。さらにペルーの国民的料理人ガストン・アクリオシェフの元でも研鑽を積んだ。
世界各国を渡り歩き、ここ数年は日本を拠点に活動。
しかし今なお、年に1度はアマゾンに赴く。
なぜなら、そこに料理人として取り組むべきテーマ、進むべき未来があるから。
生産者は幸せであって欲しい。
食を起点に社会を変える。
太田シェフがそう考えるようになったきっかけは、ペルーでの生活にあった。
「カカオの原産国で、素晴らしい食材に恵まれている土地にも関わらず、そこに住んでいる人が食べているチョコレートがなぜこんなにまずいのか。」
原産国が潤わないとおかしい。
日本人にも原産国の現状やカカオの可能性を伝えたいと立ち上がった太田シェフ。自らカカオを輸入、販路を開拓し、カカオ農園に正当な対価を支払う、フェアトレードの仕組みを確立。その取り組みと思想は共感を呼び、今や全国に400店舗ものパートナーを得るまでになった。
そんな太田シェフが挑んだ未来へ遺すべき作品作り。
食材はもちろんアマゾンカカオ。
しかし、太田シェフがアマゾンカカオと合わせたのは意外にも「水」。
太田シェフの出身地、長野の魅力の一つでもある「水」。
軽井沢のミネラル豊富な硬水、小諸の弁天清水の軟水。
硬水と軟水2種類の水を使い、アマゾンカカオのデザートを作った。
まずは、軟水とカカオを使ってジェラートを作る。
そこに砕いたカカオをすりつぶしたカカオニブを石うすでさらに細かくすりつぶしてペースト状にした、カカオのフレッシュ感を感じられるソースを合わせた。
次に硬水では、カカオのケーキを作った。
小麦粉や生クリームやバターは使わず、アマゾンカカオのパウダーに硬水、卵のみを使用して焼き上げた。仕上げにかけたのはアマゾンでとれた名もなき3種類のはちみつ。
自然から頂いたものに少しだけ手を加え、アマゾンの奥地でも作れる最小限の素材で作品を作りあげた。
太田シェフの想いはひとつ。
原産国の人の生活が少しでもよくなるように、カカオ本来の魅力を世の人たちに伝えていく。
品質の良い食材を作っている生産者が幸せでない社会を変えたい。
その強い想いを、ひとりでも多くの人に、そして未来の料理人に伝える太田シェフの一皿でした。
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