#14 清淡干鮑
川田智也 / 茶禅華
「真味是只淡(真の味は淡きところに宿る)」
清らかさと力強さが調和した時に生まれる、真の味を目指し、
中国料理の新たなる境地を切り開く料理人、川田智也シェフ。
2017年に南麻布にオープンした「茶禅華」の料理長に就任し、開店後わずか9ヶ月でミシュランの二ツ星を獲得。2019年のアジアベストレストラン50でも初選出で23位に輝くなど快挙を成し遂げた。
物心がついたころには担々麺や麻婆豆腐を好んで食べていたという筋金入りの中国料理好きの川田シェフ。幼稚園の卒園アルバムにはすでに、コックさんになると書いていたほど。
2000年には、宣言通り料理の道へ。四川料理の名店「麻布長江」で10年もの間、研鑽をつんだ。
しかし、次に門をたたいたのは、畑違いの日本料理の店、「龍吟」。
「日本で中国料理をやるためには、日本のことをもっと知らなければならない。」
本気で日本料理を学び、たどり着いた境地を川田シェフは漢字4文字に込めた。
和魂漢才
中国から伝来した食文化(=漢才)を、日本の食材で、日本の地で、日本の精神性で(=和魂)さらに昇華させた料理、それこそが川田シェフの料理。
そんな川田シェフが未来へ遺すべき作品の主役に選んだ食材は、三陸の干し鮑。
江戸時代、干した鮑、フカヒレ、ナマコは俵物三品と呼ばれ、俵につめ、長崎の出島から中国に輸出され、幕府の重要な収入源となっていた。その生産を担っていたのが三陸地方。
当時、幕府で管理されていたため、干し鮑を食べることはご法度とされており、現在も三陸地方には、干し鮑を使った食文化はなく、ほぼ100%中国に輸出されている。
日本の料理人が使いたいとなると、中国に出向き、逆輸入するしかない。
そんな現状を知る川田シェフが、三陸の魂のこもった干し鮑を未来へ遺すべく作った一皿が「清淡干鮑」。
干し鮑は豚、鶏、金華ハムとともに二日間炊いて濃厚に戻していく。ここまでは王道の調理法。
ここから、白濁したスープの中に鶏のミンチを加え、必要でないものを引くという手法で、黄金色の透き通ったスープに仕上げた。
その味わいはまさに、真味是只淡。
干したからこそでる鮑本来の味を活かしながら、どこまでも清らかな味わい。
三陸の伝統と命をつないできた大事な食材、魂を中国料理に仕立て上げた、和魂漢才の一皿が完成した。
日本で古くから生産されている食材でありながら、日本人のほとんどがまだ知らない味がある。三陸の人の想いで守られてきた食材が、中国の伝統的な食文化を今に、そして未来へ伝え続ける。
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