#17 ホロホロ鳥のコンポジション
髙良康之 / ラフィナージュ
東京銀座に昨年オープンしたばかりにもかかわらず、フレンチでは東京一とも言われるレストラン、ラフィナージュ。
なぜまだ歴史の浅いこの店に高い評価が集まるのか。
それは今回の主役、オーナーシェフの高良康之シェフの輝かしいキャリアの賜物。
振り出しはホテルメトロポリタンの洗い場。その後、フランス各地で2年間修行ののち、帰国後は名だたる店でスーシェフ、シェフを歴任。そして2007年、日本を代表するフランス料理店のひとつ、銀座レカンの6代目シェフに就任、10年間腕を振るったのち、昨年独立。
新しく構えたのが、ラフィナージュ、フランス語で熟成。
もっともっと“しんか”をしていきたい。進む“進化”も含めて、深く掘り下げる“深化”もしていきたいという髙良シェフの想いがこめられている。
高い技術力と感性、特に肉の火入れは天才と称される髙良シェフの料理。
そんな高度な技術を持つ、高良シェフが使命感を持って取り組んでいるのが、若手料理人にフランス料理の“基本”を教えること。
「新しい料理がたくさんできてきて、シェフオリジナル料理が主体になってきているが、そのシェフは古典料理だったり、自分が学んできたものを再構築したものを料理として出している。そうして作り上げられた料理だけを見て育った世代は、その下地を知らない。」
「フランス料理は魚を下ろしたら、魚の骨からソースの元になるフュメ・ド・ポアソンというだしをとったり、全部使い切るというのが、フランス料理の精神。」
出来上がった料理だけではなく、こういったフランス料理の精神や技術を後世に残していきたいと髙良シェフは考えている。
そんな髙良シェフの未来へ遺すべき作品。
みんなが努力してきた食材を使いたいと、選んだ食材はホロホロ鳥。
日本では数少ない、雛から飼育している、岩手県花巻市にある石黒農場。
ビタミン剤をはじめ薬品は一切使わず、えさは土地の雑穀。
寒さに弱いため、小屋には温泉を利用した床暖房を設置、快適な空間で育まれている。
そんなホロホロ鳥の全てを使った一皿。
砂ぎもとハツは塩をまぶし、油で煮てコンフィに。
部位ごとに最適な火入れを見極め、培ってきた多彩な技術を駆使する。
胸肉は一部をミンチにかけてつなぎにし、ささみとともに、もも肉で包む。
そうすることで、食感と風味を残した。
そしてこの料理最大の問題、どうしても舌先に残ってしまう脂。
「脂を切るというよりは、調和させながら、脂はちゃんと生かす。」
合わせる素材は酸。選ばれたのは熟成をかけたまろやかで深みのある赤酢。
そこに鶏ガラを使ったブイヨンと胸肉から4時間かけて引いたコンソメを加えてソースを作り、完成させた。
髙良シェフがこの作品に込めた想い。
この一皿にたずさわるすべての人の想いを無駄にしたくない。
食材全てを無駄なく使い、それぞれの部位を活かしきるために、継承してきたフランス料理のテクニックの全てを注いで一皿を完成させた。
生産者の愛情、先人の想い、すべて無駄にしない。
この気持ちが豊かな食を守り続ける。
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