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#32 ヨシキリザメの姿煮込み

黒森洋司 / 楽・食・健・美 -KUROMORI-

今回の料理人は、宮城県仙台市の広瀬川の岸辺にある広東料理の名店、KUROMORIの黒森洋司シェフ。

KUROMORIのコースメニューには宮城の食材で構築された地産地消の料理が並ぶ。海の幸、山の幸に恵まれた宮城の食材を軽やかな料理にしたてていく、繊細で優しい料理。

楽しく食べて、健やかに美しく」が黒森シェフのモットー。

しかし、そんな黒森シェフ、実は仙台には縁もゆかりもない。

横浜市生まれ。札幌のホテルで料理の道へ。
香港ガーデンを経て、広東料理の名店、福臨門魚翅海鮮酒家の料理長を日本人として初めて務めた。

移住のきっかけは2011.3.11。
仙台に住む友人の「仙台の人間にも温かくて旨いものを食わしてくれないか」という一言だった。

「料理人としてなにか復興のお手伝いをしたい」

前々から、宮城県には中国料理の食材が多いということを知っていたこともあり、移住を決意した。

自然豊かな三陸は海の幸の宝庫。
中でも宮城は中国料理には欠かせない、干し鮑、干しナマコ、フカヒレの主要な生産地。

山の幸も豊富。黒森シェフにとって特に思い入れの強い食材が、宮城の伝統野菜、名取せり。

生産者の三浦さんは「和食に合わせることの多いせりを中華的な角度で広げてくださることが多く、この野菜にもまだまだそんな可能性があるんだと教えてもらうことがある。それは昔からの在来野菜を育てている農家にとってうれしいこと」だと言う。



そんな宮城を愛する黒森シェフはどんな未来へ遺すべき作品をつくるのか。

選んだ食材は気仙沼のヨシキリザメの尾びれのフカヒレ

鶏肉、豚肉、金華ハムを加えて4~5時間煮てスープを作り、スープとフカヒレを合わせて、十分に温まったところでフカヒレだけを取り出し、残したスープを極上のあんに仕上げた。

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この一皿に込めた黒森シェフの想い。

「もともとある宮城気仙沼の食文化であるフカヒレを絶やしてはいけない。
その大切さを伝えていけるのは、生産者の方はもちろんだが、おいしさを伝えるのは料理人の仕事。

その地にあるものをいかに生かせるか、料理人として生産地を守らないといけないと考えると、その場所で作るのが一番だと思う。

このフカヒレは気仙沼港で水揚げされ、加工され、KUROMORIで提供する、宮城県から一歩も出ていないフカヒレ。ここまで来て食べさせたい、フカヒレを食べるなら宮城に行こうと思っていただける料理を作らないと宮城でやっている意味がない」

食材、食文化を守っていくことは、それが育まれた地を守っていくことだということが伝わってくる一皿でした。

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