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#43 かぶら蒸し

森川裕之 / 浜作

今回の料理人は、蝶ネクタイに眼鏡の個性あふれる出立の板前、浜作の森川裕之さん。

彼の祖父である、森川栄氏が京都祇園に店を構えたのは昭和2年。
包丁名人として名を馳せた彼は、その腕前、手際も楽しんでもらおうと板場をカウンター席で囲んだ、「板前割烹」を誕生させた。

その三代目を継いだのが森川さん。

森川さんの料理には大前提がある。

人目につくものはすべて、美しくなくてはならない

「この(準備の)段階できれいでないものは、お料理してもあきまへんな。きれいには仕上がらない。お料理は手品とちがいますから」

そう話す通り、板場に食材がきれいに整列したところから、お料理が始まる。

素材の魅力を包丁一本で開花させる、祖父の代からの伝統芸、花びらが舞うような歯ごたえが楽しめる、明石鯛のお造り。

大ぶりのハマグリを抱き込んだ浜栗しんじょう。ふわりとした弾力の中からあふれ出すハマグリのエキス。それをだしがしっかりと受け止める。

食材は最高、仕立てはシンプル。
森川さんは、浜作という古典を守り続けている。

「浜作三代目主人の役割は、昭和2年に始まった板前割烹を変えない、そのまま純粋な形で残すのが私の役割」

命を削り、己を磨きながら古典という山脈を登り続けている。


森川さんは、どんな未来へ残す一皿をつくるのか?

まず包丁を入れたのは、聖護院かぶら。
擦ったかぶらに熱湯をかけ、アクを抜き、泡立てた卵白と合わせた。

ゆり根、甘鯛、えび、焼いたあなごを鉢に盛り付け、それらをかぶらで包む。そして、蒸し上げる。

だしに葛でとろみをつけたら、いよいよ仕上げ。

森川さんが作った一皿は、浜作伝統のかぶら蒸し。

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なぜ、この一皿だったのか。

「先人から残ってきたもんを、次の未来に何十年百年と残していただくには、ここでちゃんとしたもんを作って。皆さん、新しいもんばっかりに目がいかはるので、古いもんにもなかなかええもんがあるなと思っていただきたい」

「昔はよかったなぁということだけではあきまへんけど、それをやる人もないとあきまへん。役割があると思います。私は古典をちゃんと残す役割。ここへ来たら、板前割烹というのはこういうもんやったなぁとわかってもらうということが、三代目の責任」

森川さんが未来に遺したかったもの、
それは、古典を継ぐ気概だった。


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