#25 山、川、海、そして未来の空へ
吉武広樹 / Sola Factory co.
今回の主人公は本場パリでミシュランの星を獲得したフレンチの料理人、Solaの吉武広樹シェフ。
シェフが作る料理はフレンチに和を融合させた自由な発想のフレンチ。
吉武シェフがその料理にたどり着いた原点となったのが、フレンチの鉄人、坂井シェフ。坂井シェフにはフレンチは醤油を使わないなどという先入観は全くなく、中華の手法、和食の手法、なんでも取り入れる人。そんな坂井シェフに憧れ、背中を追った。
「自分に言い聞かせるのは先入観をなくすこと」
その言葉通り、フレンチの枠を超えた独創的な料理で、新天地福岡でも開店からわずか7ヶ月でミシュランの星を獲得した。
そんな吉武シェフの新しいお店に漂う食欲を掻き立てる香りの正体は薪。
この薪は同じ福岡県の朝倉市の薪。
シェフがこの薪を使う理由は、2年前に起こった水害。
水害の後、流木や倒れてしまった木を切って薪にし、その収益は地域の復興に役立てられている。
自分たちにできることを、自分たちの表現で
この海を通して世界の空へ
お店にも掲げているこの言葉通り、吉武シェフは料理人だからこそできることに、全力で取り組んでいる。
そんな吉武シェフ、未来へ遺すべき作品と聞いて、真っ先に思い浮かんだ食材求めて、再び朝倉へ向かった。
その食材は川茸。
川茸とは朝倉市の黄金川でしか育たない天然の淡水のり。
ラン藻類という地球上に5億年前くらい昔から存在していた種類のひとつだが、絶滅危惧種にも指定されている幻の食材。
収穫された後、すりつぶし、素焼きの瓦で乾燥させる。すべてが手作業。
これから100年先まで遺していくには、使い続ける人が増えないといけないとシェフは話す。
吉武シェフの未来へ遺すべき作品作り、まず取り出したのはアジ。
少なくなって、絶滅に瀕している川茸とは真逆の食材。水産資源の豊かな未来のために豊富にある魚を食べようという取り組みである“ブルーシーフードガイド”に掲載されているアジを選んだ。
もう一つの欠かせないキーワードは薪。
ここ福岡の地の川、海、山の食材、絶滅危惧種と豊富な海の幸、水害を乗り越える希望の光の薪という一見ばらばらな食材を吉武シェフはどのようにつなぐのか。
完成させたのは、これら九州の食材をフレンチに仕立て上げた、まるで絵画のようなテリーヌ。
型に薄く切った大根と大葉をしき、薪であぶったアジ、鶏のささみ、なすを敷き詰める。川茸はコンソメで味付けした後、ゼラチンを加え、ゼリー状に。海の幸、山の幸、九州の様々な食材を川茸がつないだ。
どうすれば環境を守れるか?
その問いに自分たちの表現で答えた、一皿を完成させた。
こうでなければならないという先入観を捨てた先に、楽しく、おいしい食の未来が広がっているのかもしれないと思わせてくれる一皿でした。
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