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#10 サステナブルな鮪

石井真介 / Sincere(シンシア)

今回のシェフはシンシアの石井シェフ。

オテル・ドゥ・ミクニ、ラ・ブランシュといった巨匠のお店で研鑽を積んだ後、レストラン バカールをオープン。予約の取れない繁盛店にするも、2015年にやむなく閉店。そして2016年、自らオーナーシェフとしてオープンさせたのがシンシア。

クラシックなスタイルや技法を独創的な世界観で包み込んだ石井シェフの料理。遊び心があり、見て楽しい上に驚きのある味。食事を超えた体験は鮮烈な印象を与える。

そんな石井シェフが、お店の営業後、日付が変わろうかという遅くに向かったのが、自ら立ち上げた料理人のチーム「シェフズ・フォー・ザ・ブルー」の集まり。

近年、乱獲などにより、多くの水産資源が減少する中、それを食い止めるべく料理人として何ができるかと考え、2年前からフードジャーナリストと組み、サステナブルシーフードの普及など様々な活動に取り組んでいる。

日本の海から魚が消えるのは料理人にとっても死活問題。何とか歯止めをかけたいという、石井シェフの情熱が仲間を動かし、大きなうねりになりつつある。


今回の作品にも関わる、ある水産資源に異変が起きていると聞き、確かめにきた石井シェフ。向かった先は玄界灘に浮かぶ壱岐の島。

かつてない窮状にさらされているのは日本人の大好物、クロマグロだった。

その異変の原因となっているのが、巻き網漁という大きな網で獲物を一網打尽にする漁法。産卵期になると群れを成すマグロの習性に目を付けた巻き網船団が、日本海沖に広がる産卵場で15年ほど前から親マグロを大量に漁獲するようになった。

そうして大量に獲られたマグロは血抜きなどの処理がきちんとされずに水揚げされることから、品質が低く、安値で買いたたかれる。

「このままいけば、こだわって釣ってきた漁師はいなくなる」

産卵期を禁漁にすることが、資源回復への絶対条件だと漁師たちは訴える。


日本の素晴らしい水産資源を守りたい、と立ち上がった石井シェフの未来へ遺すべき作品への挑戦。

真っ先に手に取った食材は、激減しているはずの「クロマグロ」。
日本の近海にいる「太平洋クロマグロ」ではなく、地中海やヨーロッパに生息する「大西洋クロマグロ」だった

「大西洋クロマグロ」は絶滅危惧種に指定されているが、近年しっかりとした資源管理をしたことで、資源が戻ってきている

大西洋クロマグロの資源を管理する国際機関が、巻き網漁に重点的な規制をかけるとともに、各国の漁獲枠を大幅に縮小した。いつどの船がとったものかが分かるようにタグづけの上で管理し、違反したら罰則を設けた。

「大西洋で起きた変化を知ってもらえば、日本のクロマグロを取り巻く環境も変わっていくはず」そう信じて石井シェフは、作品の主役に「大西洋クロマグロ」を据えた一皿を完成させた。

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この一皿の着想は「お寿司」から得た。

お寿司のごはん、わさび、酢を
ごはんの甘味=根セロリのピューレの自然な甘味
わさびの香り=マドラスオイルのカレーのようなスパイシーな香り
酢=カラマンシービネガーの柑橘の酸味 で置き換えた。

大西洋クロマグロのように太平洋クロマグロも資源管理をすれば、未来の子供達にも遺せる。

海の恵を未来につなぐため、料理人として、あらゆる手をつくすという、石井シェフの決意の一皿でした。


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