にしん茄子 食べて・作って・また食べて #2
レストランのカウンターで食事をしているとたまに常連の方から
お店の特にお気に入りの料理を教えて頂ける事がある。
霞町やまがみさんで教えて頂いたのは「にしん茄子」(期間限定)
京都のおばんざいなどで定番だが常連の方が惚れ込んだ料理はどのようなものか期待が膨らむ。
まずは訪問前に予習として自分で創造しながらつくってみる。
ふつう。
いよいよ霞町やまがみさんで「にしん茄子」を頂く。
昔のベネチアングラスに盛られた「にしん茄子」が登場
と思いきや「にしん」がない。
ご主人に少しお聞きすると「にしんは出汁として使ってます」との事。
一口頂くと自作とは全く別物の風味。
ほんの少しの軽い歯ざわりと出汁をふんだんに含んだ、ふわっとした茄子の風味が楽しめる。にしんの脂をまったく感じず、とにかく角がなく洗練されている。丁寧な仕事が伺える。
どうしてにしんを入れないのか、あらためてお聞きすると
「少し野暮ったくなると思いまして」
と、笑って答えが返ってくる。
凄い。
野暮と粋の境または洗練、センスといった数値や理屈にない感性が表現されている。
数秒間の衝撃からあらためて我に返る。
カウンターの奥のほうでは女性の方がこの「にしん茄子」を口にした瞬間、
上品にガッツポーズをされた。ふた口目を口にすると料理に手を合わせて拝んでいる。
わかるわかるその気持ち、とてもよく理解できる。
感性にふれるクオリティの高い一品、プロフェッショナルの仕事は凄い。