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まるごと野菜の濃厚な甘さにこだわったらパン用スプレッドになった。「ZENBスプレッド」が出来上がるまで

最後の開発テーマ


開発テーマになってから1年以上が過ぎ、2023年5月にようやく発売を迎えた「ZENBスプレッド」。
 
開発担当の小又(こまた)です。素材の風味、手作りのようなやさしいおいしさ・・素朴だけど身体に染み渡るようなおいしさを、誰でもいつでも手にできる、そんなモノづくりの実現が目指している商品開発です。実は商品の発売前にZENBチームから部署異動となり、最後の開発工程である工場導入のフェーズをチームメンバーへ引継ぎ、発売日を迎えました。添加物に頼らないからこそ、安定した品質の実現が難しい工場導入。それをやりきってくれたメンバーに感謝しつつ、商品はようやくスタート地点に立ったところ、これからお客様に寄り添える商品となるためのさらなる試行錯誤がスタートすると思っていますが、今回はZENBスプレッドの発売までの経緯についてお話したいと思います。


小又美智 株式会社Mizkan マーケティング本部マーケティング企画1部調味料2課 
2006年入社。開発技術部で調味酢、ごまだれなどを開発、ZENB R&DではZENB STICKやBITESなどを開発し、2023年より現職。

カラダにも地球にもやさしいまるごと野菜


2019年に立ち上げたZENBは2023年で5年目。今も「植物を可能な限りまるごと使うことで、おいしくてカラダにもよく地球にもやさしい、新しい食生活の創造」を目指して模索し続けています。
 
最初に発売した商品は「ZENBペースト」で、ZENBブランドの象徴となる商品です。野菜の芯、種、皮といった栄養が含まれているけどいつも捨ててしまう部分もまるごとつぶして濃縮し、さらにオリーブオイルと混ぜ、独自製法で微細化した濃厚ペーストです。


何倍にも濃縮された野菜が口内に広がる独特な風味が、お客様から「初めての体験」「驚くほど濃厚なおいしさ」と評価をいただく一方、「何に使っていいかわからない」「食感がよくない」といった声もあり、多くの皆様に日々の食生活でご使用いただくにはハードルの高い商品であることも見えていました。これ以上の広がりは難しいのではないか・・社内ではそんな声も聞かれました。

ZENBペーストよさって何だろうか・・チームでも何度も話し、原点に立ち戻った時、それは驚くほど濃厚な「甘さ」なのだと改めて気づきました。初めて食べたトウモロコシやビーツのペーストは、砂糖が入っているのかと思うほど甘かったんです。
 
ZENBペーストに使用しているまるごと野菜は、素材によって蒸したりゆでたり加工方法を変えることで素材の甘さや彩りを引き出しています。砂糖や液糖ではない、この野菜の「甘さ」をもう一度活用することを考えようとテーマ化に向けて検討が始まりました。

ペーストのよさを活かしつつ、生活者に必要とされる食シーンは何だろうか・・・ZENBユーザーの方にもご協力いただき試作品を交えて方向性を模索。その中で出てきたのが朝食シーンでの活用です。「時間がない」「いつも同じメニュー」「栄養バランスが難しい」など、朝食に悩みを抱える人は多く、そんな方にとってバターやジャム替わりになる野菜があれば、少しでも悩みを解決することにつながるのではないかと。
 
ペーストは素材そのものなので、色々な使い方はできるものの、何に使っていいのかが分かりにくい。実は発売当初、TV番組でとある有名芸能人の方に、おすすめの「パンのお供」としてZENBペーストを紹介いただき、一時欠品するような反響いただいたことがありました。

しかし、売り上げは長続きせず。ペーストだけでは食感がよくなく濃すぎるので、バターと一緒に塗る必要がある。お客様から面倒という声もいただいていました。
 
その機会と課題を活かすということで、新商品は「パン専用の調味料」をテーマとすることになりました。私たちは、野菜の甘みを活かしながらも、お客様にとって使いやすい品質を目指し、検討を開始しました。

添加物に頼らないことの難しさ


PASTEそのままでは食感がよくなく、濃すぎるので、1枚食べようと思えない。この食感はどうすれば改善するのか・・・
 
PASTEの粒子の細かさ(粒度)を変えてみたり、合わせるオイルを変えてみたり、合わせる素材を変えてみたり・・・試作は50を超え、100を超え・・こうなると担当者は少し麻痺してくるんですよね。これはダメだと、食感の良し悪しを数値で評価検討したり、料理研究家の方に試食評価してもらったりと、試行錯誤の日々。でもコーンやビーツと相性のよい素材として、カシューナッツやアーモンドの併用という組み合わせが見えてきたこと、豆乳を活用することで食感改良の兆しが見えてきました。


これならいける!と思えたのは束の間・・・そこでぶち当たる最難関のポイントが「添加物に頼らない」ということ。普通に素材を合わせただけでは油と素材が分離し、お客様の手元に届く頃には、固くスプレッドできないような品質になってしまう。夏場でも冬場でもいつでもおいしく食べることができるにはどうすればよいのか、次は物性の調整に明け暮れる日々。ナッツペーストの種類や含有量を変え、豆乳やこめ油で最適なスプレッド性のある物性を検討し、ようやくパン専用調味料として最適なスプレッド性と思えるポイントが見つかりました。

スプレッドとしてのおいしさと健康


味づくりにおいては、まるごと野菜自体のおいしさを活かすのはもちろんですが、スプレッドなのでパンとの相性をより高める工夫も加えました。いろいろ試した結果、コーンには塩を、ビーツにはレモンを少しだけ加えています。そうすることで素材の甘さを引き立てながらも、スプレッドを塗ったパンとしてのおいしさアップにつなげることができました。砂糖や液糖は使わずに、コーンはスイートコーンの甘みがぎゅっと濃縮された濃さ、ビーツスプレッドはビーツ特有の風味が、チョコレートを感じさせるような濃厚さに仕上げています。

しかも、食物繊維やポリフェノールたっぷりで、バターやピーナッツバターよりも塩分30%オフ。毎日の朝食に、プラスのおいしさや健康を提供できる商品ができたのではないかと考えています。
 
この4年間、ZENBのまるごと野菜をどうしたらより多くの人に食べてもらい、共感してもらえるのかを考え続けてきました。ペーストの問題点を解消しながら、まるごと野菜の可能性も引き出す。ZENBスプレッドが、私の一つの答えです。

ホテルニューオータニ東京のSATSUKIさんのモーニングビュッフェでも採用になったということで、シェフにも認められたというのは自信になりました。皆様の朝食でも使っていただけたらうれしいです。