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#47 樋口宏江 ~未来へ遺すべき一皿 ~ご縁を紡ぐひとさら

樋口宏江/ラ・メール

1951年開業の日本有数の観光ホテルである志摩観光ホテル。

フレンチレストラン「ラ・メール」を始め、ホテル全てのレストランカフェの統括をし、調理に係る60名近いスタッフを率いるのが志摩観光ホテル第七代総料理長樋口宏江。料理人として早くから頭角を現していたが総料理長にまで上り詰める女性となると、日本では数えるほどしかいない。

G7伊勢志摩サミットで、各国首脳に地の食材をふんだんに用いたフレンチでもてなし賞賛を浴びた。料理の根幹を貫くのは伝統と革新

先々代高橋総料理長が考案した伊勢海老のアメリケースソースを守りつつも、一方新たな境地にもチャレンジ。伝統的な食材のあわびは、ステーキではなく低温調理したアワビと揚げたアワビの食べ比べ。アワビ2種類の調理法をアワビからとったダシに焦がしバターを合わせた泡のソースを合わせた。

メインは、松阪牛のステーキに熱いスープを注いだもの。スープはビーフコンソメにチキンとトマトのブイヨンを加え、さらに鰹節の香りを移したものである。

「フランス料理を召し上がったお客様が最後のお肉料理がお腹がいっぱいになってきて、食べるのがしんどいというお言葉を伺ったことがあります。軽やかに召し上がっていただくにはどうしたらいいかなと考え、和食の最後の締めで頂く焼きおにぎりのお茶漬けからヒントを得て、鰹節を使いました

伊勢志摩サミットを機に生産者の方と繋がる大切さを再認識したという。
「一つ一つ素潜りで採られていことが分かっていても、台風が来ると1ヶ月漁に出られないことを伺うと、自然相手の仕事はすごく大変だっていうことが感じられます。資源を守りながら、自分たちの子供たち、孫たちの代までこの仕事が続けられるかどうか、先々のことを考えて漁をされたりしてるというところも大事なことだと感じました」

未来に残すべき作品は、三重の海の幸と山の幸を取り合わせた一皿。まさに伊勢志摩。

作品のメインとなる食材は伊勢海老。志摩観光ホテルの代名詞の伊勢海老の新たな可能性を引き出す。さらに用意したのは伊勢志摩の冬の味覚のあのりふぐ、トロさわら、サザエ。
さらに手にしたのは摘果したせとか。摘果とは良い果実を得るためなりすぎた実を摘み取ることで枝を保護し、土壌を豊かにする役割もある。
まだ青いせとかの皮を丁寧に向きせん切りにし、塩と青唐辛子を加えて、柚子胡椒ならぬ、せとか胡椒を作る。
 
そしてふぐのゼリー寄席。チキンブイヨンに焼いたふぐのひれと骨を加える。煮て濾す作業を繰り返したのち、味を調えたら、身をほぐしたものや細かく切った皮を加え、せとかで香りをつけたら混ぜながら冷やす。
 続いてせとかのソース作り。絞った果汁を鍋に移し煮詰める。せとか胡椒、塩、白ワインビネガーを加え混ぜる。オリーブオイルを加える。
 
伊勢海老、トロさわらは炭火で香ばしく焼き、あのりふぐはバーナーで炙る。伊勢海老を筆頭にきらり輝く伊勢志摩の個性派たちをせとかのソースがまとめあげる。

なぜこれを未来に残そうとしたのか。
生産者さんとのご縁を大切にしたいという部分で、これから先もこの後に続く人達に継承して欲しいなと思いがありました。海の幸、山の幸それぞれ作られる方、採ってくる方が違います。また、今回せとかを選んだのは、素材と柑橘がよく合うというところと。そして、夏の暑い時期に摘果した青い実のせとか、ちょうど熟している途中のせとか、一つの生産物の移ろいをお召し上がりいただきたくて合わせました。」

さらに樋口はメッセージを残した。
「一生懸命自分がやれば周りも必ずサポートしてくれると思うので、自分の道を貫いてたくさんの女性料理人が、もう私達が紹介される時に'女性の'と言われずに単に'何々シェフ'ですと紹介していただけるような、そんなこう料理の世界になればいいと思います」

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